前向きさと元気だけではやはり大人は生きていけない、というかこの作品がリリースされた1978年当時は、若い世代にこそ、このネクラという不名誉な形容の世界観が大いに受け入れられていたのだ。自分の男を奪った女に電話して、その女がまた優しく話し続けてくれるという冒頭の朗読「元気ですか」、壮絶でもあり、女の悲しい業を描く大ヒット「わかれうた」や「化粧」、冴えた文体で不器用な生き方しか出来ない人間にとっての世の中を描く「世情」などなど、これぞまさに70年代日本のブルース。でも、実は男女の関係もミュージシャンを目指す貧乏青年も、さして人間その時代と変わりはしない…悲しさに耽溺(てんでき)するも冷静に聴くもアリな懐深い作品だ。(石角友香)
なかなか言ってくれない男性陣へ、口に出していってほしいと願う女ごころを綴った作品! 1978年3月にリリースされた、中島みゆき渾身のラブをテーマにしたナンバー集。せつなさが伝わる哀しみソング「わかれうた」、女性の切なる思いを描いた「化粧」、涙も枯れ果てた世界をあらわした「世情」他、全9曲を収録。
ディスク:1
1. 「元気ですか」
2. 怜子
3. わかれうた
4. 海鳴り
5. 化粧
6. ミルク32
7. あほう鳥
8. おまえの家
9. 世情